橘海月 "ラブカは静かに弓を持つ" 2024年8月15日

橘海月
橘海月
@amaretto319
2024年8月15日
ラブカは静かに弓を持つ
音楽著作権連盟に務める橘は、チェロの経験を買われミカサ音楽教室への潜入調査を命じられる。過去の出来事からチェロを避けていた橘は、講師の浅葉と出会いチェロへの想いが変化するも、潜入終了の期間は刻一刻と近づき…。読みながらずっと「無伴奏チェロ組曲」が流れていた。音楽に心揺さぶられる一冊。 影のある孤独な主人公橘と、根っから朗らかそうな講師浅葉の対比もいい。また、チェロを思うと深海に沈むような息苦しさしかなかった橘が、徐々に呼吸するように軽やかに弓を扱う様も、音楽教室の他の面々との交流もよかった。そして後半明かされるまさかの彼女の事実も。全てが予想通りに進むのに、どの場面も想像以上によくて、発表会も気がつくと夢中になって応援していた。 偽りなのに、ただの仕事なのに、引き返せなくなってしまう。それだけの魅力が楽器にはあるし、講師である浅葉にもあった。何より主人公がそれまでが無だったのも大きい。読みながらこれはきっとのめり込むだろうなと思うと同時に、のめり込んじゃえとも思った。引き返せなくなってしまえ、その価値が音楽にはあるのだからと。 『ラブカは静かに弓を持つ』が好きな人は、いくえみ綾『G線上のあなたと私』もおすすめ。社会人になって音楽教室に通う面々、彼らの事情やゆるい習い事としての楽器の魅力が詰まってて良い。 また、期間限定の主人公の変化という点では、本多孝好『チェーンポイズン』もおすすめ。こちらも重苦しさを抱えた主人公が、限られた期間をどう過ごすかが肝の物語だ。
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