
橘海月
@amaretto319
2024年4月20日
同志少女よ、敵を撃て
逢坂冬馬
読み終わった
#ミステリ
普段ミステリを読む際に、謎解きを楽しむか小説を楽しむか自然と分かれるのだけど、この本はとにかく小説そのものに惹きつけられた。
ソ連の村で猟師の母と暮らすセラフィマ。突如村を襲ったドイツ兵に皆殺しにされ、生き残った彼女は復讐を誓い狙撃兵となる。自らも狙撃兵であるイリーナに「戦いたいか、死にたいか」と問われたセラフィマは、母の仇を撃って最後にイリーナを撃つことのみを胸に訓練をこなす。教官のイリーナを始め生徒は皆孤児の女性。彼女達との絆が深まり「立派な狙撃兵」となるセラフィマ、だがそれは戦場へ赴き殺人を厭わないことだった。
本書は少女セラフィマの成長物語であり、実在した女性兵士を描いたドキュメントに近いものでもあり、何よりも時代に翻弄されつつ互いにぶつかり合いながらも思い合う彼女達のシスターフッドの物語だ。セラフィマが撃つ敵は、撃ちたい相手はドイツ兵だけではない。その苦悩や葛藤が手に取るようにわかる。
読み進めながら、セラフィマと同じように私もずっと逡巡していた。彼女の復讐が叶うのが本当に良いことなのか、敵は、敵とは一体誰なのか。学校で狙撃を学んだ生徒が殺され、目の前で子供が撃たれ、助けようとした兵士が撃たれる。死と隣合わせの中いつしか狙撃したスコアに興奮し誇るセラフィマ。
仲間が死に傷を負い、ドイツを追い詰め戦争が終結しそうな兆しでもなお、復讐に執着するセラフィマの最後の戦い。宿敵やイリーナとの関係も、まさかの邂逅も全てが集大成で息もつかせぬものだった。その後の穏やかそうな生活にすら戦後の影は色濃く落ちていて、彼女達に思いを馳せずにはいられなかった。


