
橘海月
@amaretto319
2024年7月20日
スピノザの診察室
夏川草介
読み終わった
京都の小さな病院で、往診を担う柔和な内科医の哲郎、通称マチ先生。妹を亡くしその一人息子と暮らす彼は、数年前までは大学病院に籍を置く内視鏡の第一人者だった…。淡々と進む日常に揺らめく京都の街並み、そして和菓子。淡い水彩画のように静謐な物語。
文中に「医者は科学者と哲学者の領域だ」といった言葉が登場する。最先端の科学技術を用いて治療を行う立場と、それでも踏み込めない領域、死について考えずにはいられない立場。どちらにも偏らない中庸な医者が多い中、哲郎はそのどちらも深く踏み入れつつひょいっと軽々と行き来する。人を惹きつけずにはいられない。
ちなみに、著作について書かれた著者のインタビューで1番心に響いた箇所。
「大事なことってわかりにくいと思うんです。わかりにくいことをわかりやすく書いた瞬間、伝わらなくなる部分がある。そう考えると、小説という形態が一番いいんですよね」
これは本当にそうだなとしみじみと頷いた。