
時雨崎
@rainstormbook99
2025年12月30日
失われた貌
櫻田智也
読み終わった
正義と倫理と情の危ういバランスに何とも複雑な切なさを感じる話だった。
刑事が主役。事件は山林に遺棄された顔の無い死体が発見されることから始まる。そこから鮮やかに解決する有能な…ではなく、情や善意や正義感ゆえに脇道に逸れた調査をしていたら予想外のところで解決への道筋が立っていく。
現代的だな〜という印象。
トリックは分かりやすいヒントを出している。勘が良ければ中盤で多分〇〇〇がミスリードになって誰かが〇〇〇〇〇をしているってことだろうなと。タイトルもかなり大きなヒントっていうかそのまま。顔ではなく貌です。
が、途中で気づいてもなお犯人が「誰」なのかに差し掛かると あっ、あ〜今までの日常描写はそういうこと、もうやめようやめてくれと悲しい気持ちに。
ささやかな良心だったんだ…家族を想う感情は世間的な正義じゃままならないんだ…そういうやるせなさを感じるには十分な描写がさりげなく全体に仕込まれている。
令和の日本の倫理観だな…登場人物の感情の揺れが絶妙。ミステリでありながら人間ドラマの深みのある良作品だった。
今年のこのミス一位を取るのも納得。



