みーる "成瀬は都を駆け抜ける" 2025年12月7日

みーる
@Lt0616pv
2025年12月7日
成瀬は都を駆け抜ける
成瀬シリーズ最新刊であり最終巻。まず、読後感が本当に清々しくて素晴らしかった。小説は突き詰めるとただの娯楽。楽しいが全てだと思う。読んでいて楽しい、読み終わって幸せ。そんな小説だった。な  成瀬を取り巻く人たち。坪井は恋愛に、ぼきののかは承認欲求に、西浦は成瀬に対しての恋心にそれぞれ視野が狭くなっていた。そして成瀬の母親もまた娘に対しての在り方に。どの語り手も「よくある悩みで、誰しもが通る悩み」であることが共通している。成瀬はあくまでそれぞれのキャラクターが一歩を踏み出すきっかけとして描かれている。 しかし、成瀬もまた1作目からただ迷いのない痛快な主人公として描かれるだけでなく、それぞれの語り手を通して目線で、落ち込んだり悩んだりする姿も見られる。「成瀬も19歳の若者なんだな」と人間らしさも垣間見える。成瀬の心情は描いていないのにも関わらず、成瀬の感情の機微が伝わってきた。 三作品通して、成瀬の一番の魅力は人を大切にしているところだ。誰に対してもフラットに相手に寄り添っている。迷いがなく、大胆なだけで誰よりも相手を想っている。一期一会の関係で終わりそうな状況でも、そこからきちんと関係性を築いている。どの人物も「面白そうなやつ成瀬」で入るが、「一緒にいて心地よい成瀬」に変化している。それは成瀬の持つ人を大切にする心が故だろう。 最終章では今まで成瀬に関わった仲間たちが最終号する大団円。1番最初から成瀬と共に歩んできた島崎を語り手にする構成は粋であり、島崎の知らないところで人と人とを繋いでいた成瀬に対して、嫉妬を覚えるのも島崎らしい。島崎は我々読者でありその気持ちを代弁してくれているよう。成瀬もやはり島崎は特別で「一緒に200年生きよう」の伏線回収。からの「200年では足りないと思っている」と成瀬らしい台詞。そして、400年という琵琶湖疏水の話と関連づけて幕を閉じる。 続編が読みたいが、ここで終わりもいいかもしれない。読んでいる間は本当に幸せだった。 滋賀県民として本当に嬉しく思う。 ありがとう成瀬。
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