みーる
@Lt0616pv
2025年12月14日
BOXBOXBOXBOX
坂本湾
買った
読み終わった
不気味な小説だった。ただ箱を仕分けするだけの仕事。従業員の立場3人、管理者の立場1人の登場人物は4人だけ。ミニマムな舞台でどの登場人物にも一切の感情移入ができなかった。
だが、展開もよくわからない。ラストも夢か現実かよくわからず支離滅裂な印象は拭えない。エンタメとして考えると脳内が霧がかっているようなそんなモヤモヤ感を残す。
本作では、「霧」が非常に有効なギミックとして機能していた。ベルトコンベア作業に「霧」を追加するだけで無機質な雰囲気と周りと遮断されている孤独感が演出される。また、登場人物がそれぞれの立場で苛立っていることが誰にも伝わらずに消えていく。そんな空虚さがよく伝わってくる。この「霧がかった」要素を入れたのは作品の雰囲気を決定づけるのに効果的だった。
作中、安が箱の中身を想像することで退屈さを免れていた。「箱」は確かに不思議で中に何が入っていても「箱」としかみない。無限の可能性を秘めているのにも関わらず、ただの「箱」としてパッケージされる。安もまたいつでも替えがきき、個性を奪われ、記号としての人間として扱われる自分と「箱」に共通する点を見出したのかもしれない。
「箱」の中身を知ってしまったら次は盗みの快感。バレないかを過剰に恐れる。安の人間的な欲求を垣間見ることができた。登場人物に感情移入などさせる気はないよという作者の意図が感じられるが、強いて言えば安は人間らしく映った気もする。
管理する側とされる側、ベルトコンベアの集配所という閉ざされた空間、バスでしかそこに行けないし出ることもできないという設定。シチュエーションスリラー的な要素がふんだんに散りばめられていた。大抵のシチュエーションスリラーは設定の奇抜さを展開が追い抜くことができないと感じている。本作はスリラー的な要素を展開に持ってくるのではなく、一個人の小さな苛立ちや葛藤にフォーカスを当てていた。死人は誰もいない。みんなささやかに苛々していたに過ぎない。話が展開しない。それなのに読むページが止まらなかった。決して、面白くてページが止まらなかったのではなく、なぜか読み進めてしまう。不思議な小説であった。
メタファーがどうのこうのと考え過ぎても興冷めしてまう気もするし、手放しに楽しめる小説でもない。ただ、記憶には残る小説なのは間違いない。
「人は単純な作業を続けると膿が溜まっていつかは爆発する」的なセリフがあったがわかる気がした。