
ジクロロ
@jirowcrew
2025年12月31日

反橋・しぐれ・たまゆら
川端康成,
竹西寛子
読み終わった
「たまゆら」は生と死とのあいだに通うささやきのように聞えた。
(『たまゆら』)
ひとつひとつのエピソードが、一本の糸を通して集まり、それらがたがいに擦れ合うことで、それを揺らす者の手加減により、そのときどきにさまざまな音色になるということ。「治子」という、不在の主人公がそのように語られる小説。
すべては選択でありながら、すべては自由であり不自由であるということ。
「聴こえてくる」、という言葉の深み。
読んでいると、隠喩と換喩のたまゆら、時間と空間のたまゆら、なんかいろんなたまゆらが交錯して、どこか不快でもあり心地よい治子のささやき、その声を、書かないうちに聴かせる、そんなことを著者は思いながら、描いたのかもしれない。
『イデオロギーの崇高な対象』(スラヴォイ・ジジェク)に描かれるところの「主体」の概念が、この短い小説のなかに、完結に表現されているのではないかと思う。
