橘海月 "劇場" 2025年2月8日

橘海月
橘海月
@amaretto319
2025年2月8日
劇場
劇場
又吉直樹
読み進めながら、芝居の脚本を書き演出をやり、劇団を作っては潰し演劇論を語る、口は達者だが恐ろしいほど才能がなく女にだらしがないある芝居人が頭に浮かんだ。魅力的なクズ、クズだが魅力的な男性をこれほど解像度高く描けるのがすごい。 ちなみにこの本がきっかけで、私が思い浮かべた人について書いたのはこちら↓ https://note.com/mizukik/n/n4fb1fc06eded 物語は、金がなく東京の街を彷徨っていた永田が、沙希と出会うシーンから始まる。友人と上京し劇団を作るも売れず、劇団員からも愛想を尽かされる永田は沙希の部屋に転がり込む。学生だった沙希は卒業し就職し変化してゆくも、永田は全く変わらず。ヒモでしかない彼の自尊心だけが肥大で驚くほどだ。 口先だけがうまく、理想論を語らせれば「こいつ凄いかも」と一瞬相手に思わせる人は確かに存在する。でも彼らの理想論は実行しないという一点において完璧なほど実現不可能で、そんなものは居酒屋での一晩の娯楽にしかならないのだ。そんな無数の「彼ら」が懐かしい記憶と共に蘇った。 永田の自尊心の高さと思いやりのなさが如実に現れたのが、元劇団員の青山に送った長文メールで、相手へのダメ出しをこれでもかと打つ永田の姿が酷く哀れで、一番笑ってしまった。なんて愚かなのだろう、愚かでそれを自覚すらしているのにやめられないのだろう。まるで演劇をやる若者の根源のようだった。
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