
ハヤシKYヘイ
@heiheikyo1
2025年12月31日
YABUNONAKA-ヤブノナカー
金原ひとみ
かつて読んだ
【2025ベスト3振り返り】
出版業界での性加害の告発をめぐる長編小説。告発される50代男性編集者の視点から始まり、40代の女性作家、30代の男性編集者、告発をした30代女性、女性作家の20代の恋人男性、・・・と様々な属性の関係者の視点が入れ変わって物語が進む。まさに芥川龍之介の『藪の中』のように、角度が変わることで見えてくる展開に目が離せない。あと純粋に一文一文が面白すぎるので、あっという間に読み切った。
私は個人的に、時代が進んで社会が「正しい」方向に進んでいくことを願っているが、自分の正義に「反する」ような、話を聞いてくれそうもない人というか、遠くを見ている人とどう対話していけばいいのか、よくわからないと以前より思っていた。『YABUNONAKA』を読むと、様々な性別・年齢・立場の語りが入れ替わっていき、それぞれの見え方を怒涛の勢いの語りとともに疑似体験できる。だからこそ余計に読後は混迷を深めるのだけど、足元も不確かな暗闇をおっかなびっくり進んでいるのは自分だけではないのだと、少し思える。もちろん、加害や権力による搾取は許されないという前提は、強調しておきたいが。
そして、40代女性作家・長岡友梨奈の章に出てくる「悪のような正義感」というワードが心に残った。自分の信じる正義に照らして「こうあるべきだ」と考える中で、他者に対して狭量になったり、糾弾したくなる気持ちが出てくるのは、身に覚えがある。どんどん暴走していく長岡の姿が滑稽だと思う場面もあれば、自分にも同じようなところがあるかも、とヒヤヒヤすることにもなる。また性加害の告発を受けた年上男性のことを言い募る長岡友梨奈の、年下恋人の男性視点の章では、あれ、でも知り合った頃の彼は大学生で長岡はその時講師だったわけだけどそれはいいんだっけ、みたいに思えてくる構図も差し込まれたりして、気が抜けなかった。



