橘海月 "夏の匂いがする" 2025年3月29日

橘海月
橘海月
@amaretto319
2025年3月29日
夏の匂いがする
夏の匂いがする
岩倉しおり,
有村佳奈,
木爾チレン
著者の初期作品集で、少女から大人になりかけの女性達が描かれている。後半二編は元から対だが、どの物語も主人公と対をなす彼女の存在が大きい。「瑠璃色を着ていた」では親友の瑠璃「植物姉妹」は姉の白花。比較し羨まずにはいられない、愛すべき存在が。 「植物姉妹」を読みながら、なんとなく吉本ばななを思い描いていたら、文中にそのまま「白河夜船」の描写があって驚いた。まさに私が思い描いていたのがそうだったから。そう、私も主人公の「奥さんはどんな人なんですか?」の無邪気な問いに「植物人間なんだ」と返された衝撃を覚えている。 この中で一押しは「植物姉妹」だ。「白河夜船」にも共通する、限られた登場人物しか出てこない閉ざされた世界の物語。どこにも行き場がない、先がない、でも時間は流れてゆき、否が応でも変化してゆく。姉の婚約者の心は主人公を過去に留めるが、毒は未来へ進ませる。彼のぶっきらぼうさがいい。 物語には赤裸々な性描写もあって、R-18文学賞を受賞した話というのが納得だった。連作の話もそうだが、著者の解説で「人を愛するとき、性というのは切っても切れないもの…そういう愛を私はきちんと描きたいと思う」とあり、当時、性に後めたさを感じていた10代の頃の自分が肯定された気がした。
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