
橘海月
@amaretto319
2025年5月17日
革命前夜
須賀しのぶ
読み終わった
昭和が終わった日に東ドイツに降り立った留学生柊史。彼はバッハが息づく国でピアノに浸りたいとだけ願っていた。だが教会でオルガンを弾くクリスタや、他国からの留学生と接するうちに、東ドイツが置かれている現状、立ちはだかる壁の存在の大きさに、否が応でも巻き込まれてゆく。
『蜜蜂と遠雷』の話をしている時に知人におすすめされただけあって、作中にバッハを始め数多の楽曲が登場する。彼らの紡ぐ音、荒れる情勢の中、音楽がいかに人々の支えとなっていたか。破天荒なヴェンツェル、防空壕で、ない鍵盤を鳴らしていたニェット、同じ留学生でも背負うものが違う彼らとの出会いに監視者の存在。
激動のドレスデンの歴史と東西に分けられたドイツの状況、それらが音楽と重なって鮮やかに描かれる。楽曲の中には私が知らない曲も、作中のオリジナル曲もあったけど、確かにその旋律はピアノでオルガンで高らかに鳴っていた。「街のいたるところに音がある」と言われる、音楽が根づいている国の景色に圧倒される。