なら
@nrayako
2024年5月19日
100分間で楽しむ名作小説 夜市
恒川光太郎
読み終わった
ただならぬ、あきらかに人間が来る場所でない夜の市場の描写が美しく、美しいだけでなく頭の中に描ける。
主人公に連れられて夜市に踏み込むいずみも、そこで出会った老紳士も、読み進めるうちに私の中に芽生えた「かもしれない」は鮮やかに裏切られた。逆に、主人公・裕司の心情は自分のことを語られているのかと思うほど痛かった。刺さった。
登場する人間たちはみな心が善良で、だから苦しみ、そのために戦い、それらはいまの私が常に物語に求めているものだった。
ハッピーエンドと言える終わり方ではないはずが、読後感は軽やか。いずみが帰路で夜市のことをほとんど思い出せなくなっていくのとリンクするみたいに。私から見たハッピーエンドではなくてもそれぞれの望みが叶ったからか。
公言も憚られるが、太宰治やら夏目漱石やら宮沢賢治やら、そういった道は一切通ってこなかった。かすりもしなかった。
小学生のときにはじめてまだらの紐を読んで以降は、あらゆる出版社、訳本のホームズを同じ話でもかまわず何度も読んだし、ルパンも当然読んだしダレンジャンにもはまった。ハリーポッターは言わずもがな。思い返せば絵本は、日本昔ばなしの類の記憶はほぼなく、アンデルセンやグリム童話が好きだった。
だから普段なら『夜市』のような作品を手に取ることはたぶんない。
そのあるはずのないことを起こさせるのがツイッター。すごい。