
橘海月
@amaretto319
2025年9月29日
神に愛されていた
木爾チレン
読み終わった
三十年新作がない作家、冴理の元に若い編集者が訪れる。是非新作をと乞われるも、自分には書く権利がないと言う。それは三十年前、白川天音が亡くなったことに関係していた。誰かを殺したいと思うほどの絶望を味わったことがあるか…過去への扉が開かれる。
ずっとひたひたと苦しさがあった。冴理が離婚した母とゴミ屋敷に暮らす時も、京大へ進学するも母が仕事を辞め困窮した時も。そんな中文芸部と後輩三人との日々だけが、小説を書き新人賞を受賞し本当に作家になったその時だけが、心からよかったと思えた。それだけに天音に脅かされるのは残酷だった。
比べたくはないのに比較される立場にいる、一番大事なものを奪われる、そんな状況となった冴理が絶望して鴨川で死のうとする場面は酷く苦しかった。そこからの執念で作品を生み出すのも、何が起ころうととにかく苦しくて。天音の側からの物語も、知ってた私はとうにわかってた。だってそれしかないもの。
何かひとつでも変わっていれば、うまくいったんじゃないか、彼女達が手を取り笑い合える未来があったんじゃないか、虚しい想像をしてしまう。でもそれは無理だとも。作中は印象的な女性が多く登場し、私はヨーコさんや茉莉が好きだった。正確には、ヨーコさんや茉莉といる時の冴理がよくて好きだった。
読後に色々考えながら、私は大学で親友になった彼女を思い出していた。二年の時、彼女は私の彼氏の元カノで、しかも私とつきあってる時に関係を持ったりしてたから私達は仲良くなりようがなかった。でも三年になり彼氏が元カレになってから、二人で元カレの悪口も言えるようになって急速に仲良くなった。関係性がひとつ変わるだけで、劇的に変化するものも確かにあるのだ。