
花木コヘレト
@qohelet
2025年12月31日
闇を光に
近藤宏一
読み終わった
図書館本
ハンセン病
私がもし編集者になれたら、こんな本を作りたい。そういう本です。2025年の、読み納めの本として、最適の本でした。
読んでいて、何度も、電車の中で、泣きました。そして、クラッシック音楽を聴きたいと、心から思いました。こんなに泣いたハンセン病の本は、新編志樹逸馬詩集以来、久しぶりです。近藤さんの言葉には、読者の心を未来へと向ける、とてつもない力強さがあります。
近藤さんの眼差しは、読者の方なんか、全然向いていません。全く気持ちいいです。近藤さんは、青い鳥楽団で、何が表現できるか、そして、楽団の表現力を、どこまで高めることができるか、そして、ハンセン病患者であるということは、音楽の中においてどんなことなのか、ただそれを追求していらっしゃいます。
この本の中には、人間についての哲学的考察などは、一切ありません。この本の中には、あるいは近藤さんの中には、そんな抽象的な思考が入る余地など、まるでないのです。
あるのはただ、ハンセン病患者として、毎日を生きるために必要な物事は何であるか、ということの追求と、自分たちの音楽の完成度を高めるためには、何が不足しているか、ということへの省察と、音楽が人生に与えてくれる、莫大なよろこびを、全身で享受するという、深い知恵があるばかり、であります。
私たちは、本書を読み終えて、本書の筆者が果たして本当にハンセン病患者かと問い、そして何よりも本当に肢体不自由の全盲の人間かと問い、そしてその問いをそのまま180度回転させて、己に向けての問いとして屹立させて、そしてその問いに打ち破れ、仰向けに倒れれば、本書を十全に読み尽くしたことになると、私は信ずるものであります。

