
読書猫
@bookcat
2025年12月25日
迷うことについて
レベッカ・ソルニット,
東辻賢治郎
読み終わった
“迷うこと。官能にみちた降伏。抱かれて身を委ねること。世界のなかへ紛れてしまうこと。外側の世界がかすれて消えてしまうほどに、そのばにすっかり沈み込んでしまうこと。ベンヤミンの言葉に倣えば、迷う、すなわち自らを見失うことはその場に余すところなくすっかり身を置くことであり、すっかり身を置くということは、すなわち不確実性や謎に留まっていられることだ。そして、人は迷ってしまうのではなく、自ら迷う、自らを見失う。それは意識的な選択、選ばれた降伏であって、地理が可能にするひとつの心の状態なのだ。”
“何かを書くということを始めたとき、わたしはそれまでの人生のほとんどを子どもとして生きていた。わたしを形づくっていたのは鮮やかで力強い子ども時代の思い出だった。時間とともにそのほとんどはぼんやりと霞んでいった。その一つひとつについて書くたびにそれを手放していった。思い出はほの暗さのなかに生きることをやめて文字に固定され、わrたしのものではなくなっていった。生きるものの帯びる漂うような当てにならなさを失っていった。”
“特定の時代に属する者は、ほとんど全員がその時代にしかみられないある種の類縁性を帯びている。”
“書くことは十分なほどに孤独だ。すぐには返答も手応えもないものに向かって告白し、沈黙に吸い込まれてしまうか、せいぜい著者がいなくなったずっと後に始まる対話を試みるようなものだ。ところが、最良の文章はまるであの動物たちのように、思いがけず、落ち着きはらって現れるのだ。何も語らずにすべてを語る、沈黙に近づいてゆくような言葉だ。たぶん、かくこととはそれ自体が砂漠なのだ。それ自身が荒野なのだ。”