つのぶえ
@shofar
2025年12月24日
コンビニ人間
村田沙耶香
読み終わった
こういう小説は初めて読んだという感覚。すごい作品だった。普通に生きるということの難しさや、普通であることを求める暴力性のようなものが描かれていたように感じる。
解説で指摘されていた、生々しさと無機質さの対比もいい。幼少期の鳥の死骸の体験は、むしろ生死に彼女なりに向き合っていたよう。その感覚は普通ではない、治すべきものとして扱われた。
成長した彼女が手に入れたのは、コンビニ店員という枠組みを通して世界と関わるあり方で、天候も、状況も、身体も、人間関係も、全てコンビニのためのものとなった。この画一的で無機質な世界の歯車として機能することは、その世界に受け入れられているという体験をすると同時に、自分という存在を代替可能なモノにすることでもあった。
彼女はその世界から脱落しないためにも、その世界の普通であろうとするが、彼女が無機質なコンビニ世界の普通だけでなく、人間の世界の普通にも近づこうとしたとき、無機質な世界が崩れて、コンビニという枠組みに隠されていた人間や情緒という面倒くさいものと直面させられることとなった。それにより彼女は精神的にも実際的にも、コンビニ世界を失ってしまったよう。コンビニ世界によって自分を形作っていた彼女にとってそれは、自分自身を失うことでもあった。
しかし、再びコンビニ世界と出会うとき、彼女は「コンビニの声」を聞くことになった。自分という存在をも、コンビニ世界をも超えた、融合的なのか超越的なのか分からないものに、彼女は自己を委ねたよう。それこそが彼女の生まれ直しだったのかもしれない。
色んな適当なことをそれっぽく書きたくなるような、とにかく心が動かされる作品だった。三歩ぐらい違う道を歩んでいれば、自分も彼女か、あるいは白羽のようになっていたかもしれない。