ユメ "spring another..." 2025年12月27日

ユメ
ユメ
@yumeticmode
2025年12月27日
spring another season
『spring』の舞台裏や未来が綴られたスピンオフ短編集。前作と比べると、春を中心としたバレエダンサーたちの人間性によりスポットが当てられている。もちろん、バレエの描写も圧巻。 フランツの引退公演と春との別れを描いた短編「石の花」がとりわけ印象に残っている。生まれによって生き方を定められたフランツの背負う重荷、春との愛憎入り混じったバレエの神を奪い合う関係性と、終わりの見えている間柄であるという悲哀、そうしたものが「石の花」というプログラムにぎゅっと詰めこまれていた。 『spring』の「春の祭典」にも思ったが、恩田さんの、古典作品に春たちの物語を乗せてゆく力(とでも言えばよいのだろうか)は本当に凄い。ややもすれば単なる引用になりかねないが、本書においては古典と春たちの生き様がぴたりと調和し、いっそう響きを増している。春が振り付けた「桜の森の満開の下」も、坂口安吾の小説とラフマニノフの「鐘」を組み合わせてバレエにするなんて、いったいどうしたらひらめくのだろう、と圧倒される。 春たちがすごしたいくつもの季節——それはいずれも刹那的だからこそ美しい——を垣間見ることができて、よかった。
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