津見 "パリの砂漠、東京の蜃気楼" 2026年1月1日

津見
津見
@tmr_kr
2026年1月1日
パリの砂漠、東京の蜃気楼
金原ひとみさんのコロナ禍ちょい前のエッセイ集。とてもよかった。 ちょっと鬱っぽい人で、小説を書きながら小学生の女の子2人を育てていて、大変そう。時たま友達と飲みに行ったり音楽フェスに出かけたりしている。相当の酒飲み。で、小説家として売れっ子で結婚して子どももいて…と幸せそうな感じなのに、内心の絶望ぶりがすごい。その描写がすごい。パリにいても東京にいても、その日の絶望を細部を逃さない容赦ない筆致で書き尽くす。そこが読み応えがあってよかったです。外見からどう見えようが、人生に絶望してたっていいよね、と、なぜか読んでいて安心しました。 で、私は人生にゼツボーしてると思いますが、 「体は健康なのに」 「仕事があるのに」 「家族もいい人なのに」 と言われがち。 で、落ち込み(≒絶望)については、 「運動したら良くなる」 「食事改善で良くなる」 「夜しっかり寝たら良くなる」 と対処法を提示され、なぜそれをやらんのかと疑問を持たれる。 だけど、この大宇宙で蟻そのもの、砂粒そのものの人生に、意味なんてあるわけないし、根底にそのことがある、と認識できる人間は、だからこそ動物と違って絶望する権利があるのだと思う。まさに生きて死ぬだけの存在なわけで、絶望しないほうがおかしいと思う。 頭の何処かで「絶望してる自分は甘えてる」みたいな認識があったのですが、必ずしもそう思わなくてもいいのだなと思います。絶望してもいいのだと……絶望することを許されてるのが人間なのだと、思いました。この本読んでよかったなあ! 追記) 金原さんは絶望の回路で小説を書いているようでした。「子供と話して本当に幸せを感じて笑ったのも私なのに、今これを書きながら涙を流しているのも私だ」というようなことを書いてました。2つの世界を緩やかに行ったり来たりする、とも書いてあった。 日常生活をまともに送ろうと思ったら絶望を見ないふりするしかないので、2つに引き裂かれちゃいますよね…。外からはわからないけどそういう人、実はけっこういると思う。
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