
咲
@lunar_mare
1900年1月1日
世に棲む患者
中井久夫
対話編「アルコール症」が好き。
サン・テグジュペリの「星の王子さま」にアル中の星が出てくる。
「恥ずかしい、恥ずかしい、アル中であることが恥ずかしいのです」と言って、またぐいと一杯ひっかける。
アルコール症は恥の文化。
辱しめに敏感であると同時に、傷口に塩をすりこむように自虐的に恥にまみれることを求める。
「あなたはアルコール中毒だ」と医師が断定することは、そのような蟻地獄的自虐に加担し、倒錯的快感を高めるばかり。
それならば、底つき体験を経て自身の無力を自覚し委ねる流れは、自意識を病に寄せてしまう、危険なステップだ。
できることならば、底をつくことなく、生き延びて回復をしていただきたいところだが、如何。
患者の病以外の部分に関心を向けるのが上手な方だと知ってはいたが、まさか、患者のお髭事情にまで言及があるとは。
驚いて、可笑しい。
治療中の患者がヒゲをたてるのは良い兆候なので間違っても母や妻が剃らせないこと、
そのような剃髭の強制は去勢に近い意味を持つこと、ヒゲを剃れという周囲の圧力に抗する能力(剃髭圧力抵抗能力)と酒を飲まずにいられる能力は平行するという考察など、
臨床的視点というものはここまで及ぶのか!と、愉快で笑ってしまった。
さすが中井久夫先生。

