
犬山俊之
@inuyamanihongo
2026年1月2日
ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと
アンジェラ・チェン,
羽生有希
読み終わった
多くの当事者の方へのインタビューをもとにした、性と社会についてのルポエッセイ。
自分にとっては「言葉」についての本でもありました。
「アセクシャル」という語を知らなければ、「恋愛とは性行為を前提とした関係性である」という「常識」の外に出ることはできませんでした。しかし、同時に「アセクシャル」その他、様々な用語を知っても、それで一人一人の性的指向や恋愛感情を正確に表現できるわけではないのだとも思い知らされます。言葉の力と言葉の限界。
そして「アセクシャル」という語の意味を説明しようとする時、どうしても「欠如」という形で語ることになってしまうという陥穽。「他人に性的に惹かれない人」。この「〜ない人」という語りは、それが前提としている暗黙の基準を、そして、その特権性を隠蔽します。「歩けない人」「聞こえない人」「日本語が話せない人」。「〜ない人」はいちいち言語化される一方「ある人」はどんどん見えなくなってしまうのです。
そういうわけで、「第7章 恋愛再考」は特に付箋まみれになるほど、読み応えがありました。人は異性に(或いは同性に)性的に惹かれるのが「普通」だと漠然と思っていた「こちら側」の意識が揺さぶられます。正直、自分(犬山)は今まで一度も自分自身の性的な欲望とか、恋愛感情とかをきちんと考えたことがありませんでした。とにかく、その「考えたことがなかった」事に自分で驚きました。それでいて、他人に対して「彼女/彼氏はいないの?」とか「結婚しないのか?」といった言葉を発していたのです。その攻撃性に無自覚に。(メモ: この章に『最小の結婚』(エリザベス・ブレイク)への言及あり)
各章、様々な当事者の声を丁寧に拾っていて、そこにかぶさる著者の言葉が途方もなく深い。テレビドラマや漫画、また時事的なことへの言及を絡めながら、平易な口調で読者に語りかけるような文体はすごく読みやすいのですが、内容はすごく骨太です。練られているし、考え抜かれていると感じました。そこが本書で一番感心した点でもあります。
また、こうした文章を日本語を丁寧に日本語に翻訳した翻訳者の方の実力にも脱帽。アメリカ及び日本におけるこの分野へのの深い理解と同時に、様々なコンテンツ、時事問題についての広い知識なしにはできないお仕事。ありがとうございました。
ジェンダーやセクシュアリティ問題を考える上で非常に勉強になる一冊。
自分に関して言えば、ホントに「人生を変えた」一冊と言えます▼






