
橘海月
@amaretto319
2023年9月3日
リバース
湊かなえ
読み終わった
#ミステリ
事務用品の会社に勤める深瀬は地味で取り柄もなく、唯一得意なのはコーヒーを入れることくらい。ある日つきあって三ヶ月の恋人の元に「深瀬和久は人殺しだ」と謎の手紙が送りつけられた。深瀬は否が応でも、大学四年のゼミ旅行で亡くなった友人広沢と自身の過去に向き合うこととなる。
深瀬の自虐的な回想では優しくも愚鈍な大男でしかなかった広沢が、大学のゼミ仲間、両親、地元の幼馴染みを介すにつれ、生き生きとした輪郭を持ち、芯の通った人に好かれる青年だったことがわかる。それは深瀬にとって自身の印象を書き変える行為でもあり、終盤古川との出会いが特に強烈なものとなる。
ごくあたりまえだが、人には過去があり、時には場所を変え関わる人を変えながら積み上げてきた歴史がある。その一面が時に寄って全く異なる人格に見える人もいれば、一貫してる人もいるのだろう。でも紛れもなく全部その人で、むしろ「◯◯な人」で括れる人なんかいないんじゃないかと思わせられた。
卑屈で自虐的なくせに自意識は高い、主人公深瀬はどちらというと魅力のない人物に見えた。広沢を掘り下げてゆくと同時に、そんな深瀬の良さも自然と溢れてきて。改めて深瀬にとって、広沢を失った大きさを感じる。もう取り返しがつかない後悔も含めて。ラストは蛇足か?秀逸か?まぁ、湊かなえだから…。