橘海月 "羊と鋼の森" 2021年10月19日

橘海月
橘海月
@amaretto319
2021年10月19日
羊と鋼の森
羊と鋼の森
宮下奈都
ある出会いから調律師を目指すこととなった主人公が、憧れの調律師と同じ職場で働きながら日々黙々とピアノと向き合う。物語の始まりや随所に散りばめられた森のイメージが、ピアノの音色と重なる。文字を追う毎に私達は、見えない森を見て、聴こえない音を聴くのだ。 調律師としての日々はピアノと向き合う日々でもあり、同時にピアノを弾く人や聴く人と向き合う日々でもある。この一つのことを極める過程を描く様は、小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』を読んだ感覚に近かった。主人公とピアノとそれを取り巻く人。狭く閉じているはずなのに、どんどん広がってゆく世界。 また、物語に登場するある人物の「あきらめるための夢」のエピソードがものすごく強烈で、息が苦しくなった。恩田陸『蜜蜂と遠雷』のある箇所にも感じた息苦しさ。ピアノが好きという気持ちだけではどうしようもない、渇望しても得られない才能に振り回されるもどかしさ。
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