下巻の名シーンとして、私は新選組が京を去る前夜の歳三と総司のやりとり、そして歳三とお雪の西昭庵での二日間を挙げたい。(青春はおわった。——)とは総司の胸中。新選組の在り方を青春群像劇のように捉えるのはどちらかというと女性的な発想のような気がしていたが、今回読み返してみて司馬遼太郎も「青春」の語を当てていたことに気づき、感慨深さもひとしおだった。西昭庵でのくだりは、歳三が「華やかだ」と言った落ちる陽の美しさが彼の生涯と重なり、胸に沁みいる。周りが時局に流される中、歳三は陽が沈む最後の瞬間まで変わらなかった。