橘海月 "王とサーカス" 2019年2月8日

橘海月
橘海月
@amaretto319
2019年2月8日
王とサーカス
王とサーカス
米澤穂信
息をつかせぬ展開に引き込まれる物語。おすすめ。 新聞記者からフリーとなった万智は、ネパール旅行中に王族殺害事件に遭遇する。記者はなぜ書くのか、なぜ書かないのか、そしてなんのために書くのか。劇中ある人物が万智に放つ言葉が痛烈だ。 「自分に降りかかることのない惨劇は、この上もなく刺激的な娯楽だ」 私達は物語を読む時、無意識のうちに登場人物を知りたいと思っている。万智を八津田をシュクマルをサガルを、彼らを深く知りたいと。だがそれは本心か、本当は見たいところだけ見ようとしていないか。知りたくないことを知る勇気はあるか。本当に? 『王とサーカス』は作者にそう問われている気がした。 物語はミステリだが、謎解きだけではない魅力に満ちている。ネパールの首都のカトマンズの街並み。すぐそこにある王宮と薄汚い路地裏、そこで生きる子供たち。あたかも自身が旅行者となったかのように、熱気も湿度も手触りも味も、描写の何もかもが素晴らしい。
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