
ユメ
@yumeticmode
2016年10月18日

虚空の旅人
上橋菜穂子
かつて読んだ
感想
異文化や異界が複雑に織りなす〈守り人〉という壮大なファンタジーの醍醐味を感じられる一冊。初めて読んだときから、シリーズの中で〈旅人〉がいちばん好きだと思った理由に、10年以上経った今、気がついた。皇太子という縛られた立場と、ひとりの少年として抱える幼さや清らかさの狭間で葛藤するチャグムの心中が切々と迫り、それでも自分らしく生きることを諦めまいとする姿にたまらなく心を摑まれるからだ。これまで守られる側だったチャグムが初めて人の命を預かり、シュガに語った夢。シュガが流した涙の熱さを、自分の頬に感じた気がした。

