
読書日和
@miou-books
2026年1月3日

真の人間になる(下)
甘耀明
読み終わった
表紙が美しい…星々の映る嘉明湖、見てみたかったなぁ。。
下巻は、3000m級の山岳地帯に墜落した米軍機の捜索へ向かう人々の物語が中心となる。ハルムトを含む日本警察・憲兵隊、そして原住民の猟師たちが山へ入っていく描写、最初は軽口を叩ける状態から、台風が接近し極限状況の緊張と不安に変わっていく。墜落現場の描写はあまりにも生々しく、痛々しい。実際の三叉山事件の現場も、このように過酷だったのだろうかと、読んでいてなかなか辛くなる。山の中で見かけた『キエリテン』。とてもかわいらしかったのに、ここでその生態を読んでしまって、次回見かけたときにどんな気持ちになるか複雑。。
物語の中のトーマスのような人物が実在したのかは分からない。しかし、もしもっと早く報告していたら、もしもっと早く行動していたら、そう考えずにはいられず、もどかしい思いでたまらなかった。
一方で、下巻でもブヌン族と自然の描写は圧倒的に美しい。特に心に残った部分を記録しておきます。
『枝の生い茂る一本のコルククヌギが、他ってハルムトを待っているのが見える。数え切れない歳月がすでに過ぎていたが、それはまだ待ち続けていた。この木は彼の名前をもって生きており、彼は木の名前を持って道を歩いている。木はそよ風の中で揺れ、明るい太陽の下で葉をきらきら光らせているが、深い霧の中に長時間たたずんでいても、豪雨の中で待っていても、ハルムトがいつ帰ってこようと美しい再会になる。コルククヌギはブヌンの服を着ている。ハルムトの古着だ。彼はなんだか自分自身が長い間ここで待っていたような恍惚とした気分にさせられた。ガガランが毎年春になると気に着せてその木を友人のように扱っているのだ』