yo_yohei "別冊NHK100分de名著 ..." 2026年1月3日

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2026年1月3日
別冊NHK100分de名著 集中講義 三大哲学書
アメリカが突然戦争を始めて言葉を失っている。今ある戦争をやめさせることができないばかりか、新たな戦争が始まってしまったことに虚無感を覚える。 ——— 本書は、『純粋理性批判』『精神現象学』『存在と時間』といった難解な哲学書について、「そこに何が書かれているのか」を概観できる入門書である。同時に、現代社会が抱える「真実(陰謀論)」「共同体(排外主義)」「不安」といった問題を、これらの哲学を手がかりに捉え直そうとする試みでもある。 まず、哲学書の概要解説としては非常に優れていると感じた。カント、ヘーゲル、ハイデガーという、通常であれば専門書を何冊も読まなければ全体像がつかめない思想について、「それぞれが何を問題にしていたのか」が明確に整理されている。本書を通じて、これらの哲学書に「何が書いてあるのか、少なくとも輪郭は理解できた」と感じられたのは大きい。これほど平易にまとめられているのは、著者の膨大な知識と読解の蓄積によるものだろう。 一方で、現代社会の問題を「どのように捉え直すか」という点については、やや物足りなさも残った。たとえば陰謀論について考えると、それを強く信じている人々は、カントが想定した「誰もが共有する理性」をすでに放棄している存在なのではないか、あるいはカントが警戒した擬似科学を積極的に支持している人々なのではないか、という疑問が浮かぶ。もしそうであるなら、著者が提唱するように「議論や対話を通じて真実の追求を目指す」という構図は、必ずしも容易には成り立たないのではないか。 排外主義についても同様である。ヘーゲルの言う相互承認が成立していないからこそ、現在の排外主義的状況があるのだとすれば、「相互承認が欠けているのだから、相互承認を回復しよう」という説明は、やや循環的に感じられる。また、排外主義を「不安からの逃避」として説明することも、一つの側面ではあっても、それだけでは捉えきれない複雑さがあるように思う。 総じて、本書は難解な哲学を理解するための導入としては非常に有用である一方、現代社会の問題の「本質」に迫るためには、陰謀論、排外主義、不安といったテーマごとに、より踏み込んだ個別の検討が必要なのではないか、という印象を持った。
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