
咲
@mare_fecunditatis
2026年1月4日
禁色
三島由紀夫
読み終わった
今年最初の読了は三島由紀夫。
今年も魅了されてやまない。新年早々に、凄まじいものに触れてしまった。良い年だ。
言葉を尽くして美が語られる。
身体を持った一個体であるはずの美青年悠一が、復讐心や慾望を投影され、嫉妬と崇拝を向けられ、「愛」されて、意志も苦悩もなく思想にもなりえない、抽象としての「美」にまつりあげられていく。
老作家は、美を支配し、または進んで支配され、翻弄され、死んでいく。
遺された一千万円というメタファー。
「愛する者はいつも寛大で、愛される者はいつも残酷さ。人間をいちばん残酷にするものは、愛されているという意識だよ」
「もはや美は人を黙らせない。美が饒舌を強要するようになった。美の前に出ると、何か大いそぎで感想を述べる義務を感じるようになった。美をいそいで換価する必要を感じるようになった。換価しなければ危険である。美は爆発物のように、所有の困難なものになった。というよりは、沈黙を以て美を所有する能力、この捨身を要する崇高な能力が失われたのであります。ここに批評時代が始まりました。こうして今日の饒舌に饒舌をかけあわせた、耳を聾するばかりの悪時代がはじまりました」
解説に書かれていた改訂の過程が興味深い。
18章「見者の不幸」までがまず第一部として単行本で発行され、その後、自身の海外旅行をはさむ約10か月の休止期間を経て、第二部が執筆・連載された。
それにあたり、当初は第一部のラストで鏑木夫人が自死する筋書きであったところを書き直し、鏑木夫人は自死せず、それどころか、悠一が鏑木夫人を愛しはじめることによって社会と家庭に復帰するよう変更を加えたという。
三島由紀夫自身いわく、「禁色」は、「自分の気質を徹底的に物語化して人生を物語の中に埋めてしまおうという不運な試み」であったという。