
漆野凪
@urushinonagi
2025年3月9日

百合小説コレクション wiz
宮木あや子,
斜線堂有紀,
深緑野分
読んでる
半分読み終えた。前回読んだときはあまり私向けではないな、と感じたのだけれど、改めて読んだところかなり味がすることに気がついた。
斜線堂有紀「選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい」は、苦しい短編だった。政治的スタンスの合わない女性同士のカップルの話が描かれている。
私は本を読むことをエンタメだと思っているけれど、この短編はただエンタメとして消費されることを拒否している。登場人物たちの不破により社会の構造が悪さを指摘されると、社会に所属しつつ社会を変えられない読み手、つまり私が悪い、と責められている気がして居心地の悪さを感じる。そんな不和や居心地の悪さを、読みやすく素敵な文章という糖衣を纏わせて食べさせられている、そんな気持ちになる。






漆野凪
@urushinonagi
小野繙「あの日、私たちはバスに乗った」は再読により良さがさらに認識できた作品。奇行をする変な少女の擬似出産を、真面目だけど変な少女が見届けるところから話がはじまる。2人の少女の「変さ」の書き分けと、みずみずしい感情の向け合いが素敵だった。
櫛木理宇「パンと蜜月」は夫とその妻、愛人が共に暮らしており、妻と愛人が愛し合っているという作品。主人公はこの生活に満足しているらしいが、夫が不憫に思えてならなかった。
宮木あや子「エリアンタス・ロバートソン」は、あるコンサートをきっかけに、主婦である主人公が自分の人生を思い返すという話。主人公の、そして家族の異常性が恐ろしかった。短編にしては登場人物が多いので本筋の関係が少し薄味に感じられたが、『雨の塔』という作品のスピンオフだと知り合点がいった。そちらの作品も読んでみたい。
