なしな
@pearna
2026年9月23日
カフネ
阿部暁子
読み終わった
帯や書店のPOPで食やシスターフッドの物語であることに惹かれて手に取った。
あたたかい読後感で登場人物にも好意的な気持ちがあるけれど、生々しくつらいシーンもたくさんあり、手当り次第誰にでも勧められる話ではないな、という位置付け。
小学生くらいの頃までは大衆意識というか、私も大人になれば母親になって子どもを産み育てるのだろうという、漠然とした人生設計を思い浮かべていた。というか、そういうルートしか思い描けない環境に身を置いていたと思う。
転校して環境が変わり、価値観が更新されていくなかで、母親になって子どもを産み(自分好みに)育てるということの恐ろしさや傲慢さについて理解していくなかで、自分にはできないなと思うようになった。20歳そこそこで母親になった同級生たちのことを信じられないとも思った。漠然と、あるいは切実に、子どもを欲しがる女性の気持ちを深く理解できない。だから薫子のさまざまな努力に、胸は痛むけれど深く共感してあげられない。序盤はその温度差で読み進めるのがつらいシーンが続くのだけれど、後半で関係者の心情や立場がわかってくるにつれて少しずつほぐされていった(それはそれとして、生々しい描写そのものが苦手でありつらいことには変わりないのだけれども)。
せつなとの名付けられない関係性のなかで、最後に薫子が提示する手段について、私はもっと軽々しく使われるべきだと思う。そうでないとその非対称性について説明がつかない。でもそういう、社会構造への気持ちとは別に、ほんとうに、物語としても読者としてもいいエンディングだなと感動したし唸らざるをえなかった。さまざまなピースが噛み合うような、納得の結末というか、そうなったらいいな、そうなってほしいなという気持ちになった。
喪失の物語のなかで、春彦のもたらした(もたらしたかった)かもしれない出会いが救いになる偶然だか必然だかわからない引き合わせという点で、これは間違いなくシスターフッドの物語だった。