
紫嶋
@09sjm
2025年1月8日

後宮小説
酒見賢一
読み終わった
借りてきた
物語の舞台は、架空の中国(風)王朝の後宮。滅びゆく王朝の後宮とあれば、退廃的で陰惨、陰湿で淫靡なものを想像しそうになるが、この物語にはそういったいやらしい湿度はなく、終わりゆくものに対するどこかカラリとした寂しさだけがある。
本当は作中の後宮だってそういうジメジメした場所だったのだろうが、主人公の少女・銀河の未成熟なあどけなさや、そんな彼女と皇帝のあまり性を感じさせない会話、後宮を学問的に捉えようとする学者の存在などが、陰の部分をうまいこと覆い隠していたのかもしれない。
架空の王朝の物語にも関わらず、まるで本当に実在する歴史書や伝聞に基づいて書いているかのような、俯瞰した描写の運びも巧みであった。
