のーとみ
@notomi
2025年3月10日

ネット怪談の民俗学
廣田龍平
かつて読んだ
廣田龍平「ネット怪談の民俗学」読んだ。この本がいいのは、パソコン通信時代の怪談や、インターネット初期の90年代に生まれた因習系の怪異譚が、どのように広がり、従来のフィクションとしてのホラー小説や映画とは、何が違い、それがどのように広がっていったかというところから丁寧に事例を拾っていることと、個人の創作としての「ネットホラー」と、ネットという双方向メディアによって拡散し変容しながら語り継がれる「ネット怪談」を明確に別物として扱っていること。
それによって、ナラティブな物語がユーザーによって作り上げられていく因習系怪談や村の怪異から、不穏さがただ積み重なっていく物語を必要としない恐怖へと変わっていくネット怪談の歴史がハッキリと見えてくる。それはまるで、三遊亭圓朝に代表される因果物語や、四谷怪談や雨月物語などの幽霊譚から、無意味に恐怖だけが存在する岡本綺堂型のモダンホラーへの推移と重なる。まあ、だからと言って綺堂怪談が、その後の怪談の主流になった訳ではなく、未だ、怪異に原因を求める物語は多く作られているのだけど、それは恐怖を「物語」という枠に収めて商品化する以上、仕方ないことではある。そこをネットが軽々と飛び越えていく過程を、民俗学の手法できちんと解説しているのが、この本の面白さ。
それは言葉による怪異と映像による怪異の違いでもあるし、創作の面白さと、(擬似)体験の面白さの違いでもあって、その違いが、実はとても遠いことを、怪談という表現が露わにしてしまうという面白さでもあると思う。人は何を怖がりたいのか、何故、怖がりたいのかについての基礎研究みたいな本が凄く売れてるというのが何とも面白いというか、もしかすると、この本をネット怪談のカタログ本と間違ってるんじゃないかという心配もあるけど、それもまたネット怪談的で、存在自体面白いと言えるかもw

