
はるき ⚠︎ネタバレ有⚠︎
@reads_hrk
2026年1月6日
プロジェクト・ヘイル・メアリー 下
アンディ・ウィアー,
小野田和子
読み終わった
情報を入れずに読め!と話題だったけど、どんでん返しがある訳ではない。
ただただ、知的好奇心と探究心と性善説が語られた物語だった。
どんでん返しもないのに、なぜ情報0で読めと言うのか。
それは、主人公と同じように、未知のものを探り、見つけ、知っていくワクワク感を、読者も味わえる作りの物語りだからだ。
このワクワク感は、真っさらな初見でこそ得られる読書体験で、だから皆口を揃えて「なにも見ずに読んで!」と言う。
それって、すごく、愛だと思う。
この物語へのリスペクトと、それを存分に貴方に味わってほしいという、愛。
だから、もしも未読でこの感想を読もうとしている人がいたら、ここで閉じてほしい。
貴方の読書体験を台無しにしたくない。
さて、以下感想。
わたしはやっぱり言葉が好きだから、グレースとロッキーが自分たちの言葉を翻訳しながら意思疎通していく過程がとても好きだった。
映画『メッセージ』で、獲得する言語が攻撃的だと敵対的関係が構築されうるみたいな事を言っていたけど、まさにそうだなと。
獲得する言語は、その世界の切り取り方だ。
グレースとロッキーが交わした言葉たちは、知的でフレンドリーで互いへの敬意に溢れた語彙ばかりで。
それは二人の賢さであり、善き心からくるものだと思う。
もし、攻撃的なやりとりだったら、確実に地球もエリドも滅んでいた。
そんな二人だから、長きに渡る恒星間航行に選ばれたのはそうなんだけど…物語や歴史を作るのはこうした善き心であってほしいと、今の世界を振り返って思う。本当に。
地球だけが、人類だけが助かればいいじゃない。
互いに協力し合い、敬意を払い、シェアしあって、あらゆる種族が救われる道を探す。
そういう世界であってほしい。
そう願うけど、別の見方をすれば、グレースは地球とエリドのために犠牲になったわけで…グレースは、新たな星での人生を「これはこれで」と楽しめているからハッピーエンドになっただけで、そういう犠牲を他者に強いるのは違う。
わたしは、こういう功利主義的考えの狭間でいつも答えが出ない思考迷宮に迷い込んでしまう。
グレースの幸せは結果論だから。
一念三千、心の持ちようと言えばそれまでだけど…うーん…。
作中のプロジェクト・ヘイル・メアリーに関わった人達は、結果として地球を救ったわけだけど、ちゃんと認められたんだろうか。
ストラットはプロジェクトが終わったら投獄も覚悟していると言っていた。
その覚悟をもって、人類を生かすプロジェクトを背負う彼女を思うと…だって、苦悩することすら許されない。
全の為の横暴は、全にとって完璧に正しかった時にしか認められない。
完璧なんて、ない。
唯一あるとしたら、地球が救われた事だけど、それは彼女が亡くなった後のことかもしれない。
文字通り、宇宙規模の壮大な知的好奇心ストーリーで、本当に素晴らしかった。
けど、人間を知っている分、ストーリーに描かれなかった物語まで想いを馳せると、少し落ち込んでしまう。
どんなに時間が経っていても、プロジェクトに関わった人達が報われる世界であってほしい。
書かれていないけど、きっとそうだろう。
そう信じている。
わたしはこれを、性善説の物語だと思うから。




