物見遊山
@kusu
2026年1月8日
呪文の言語学
角悠介
読み終わった
ルーマニア在住の言語学者が、現地の魔女が用いる「呪文」を学術的な見地から考察した一冊。
西欧とは異なり、大規模な魔女狩りを経なかったルーマニアでは魔女が舞踏や職人と並ぶ一つの「職業」として存続している。同時にそれは、各家庭で「祖母の桁外れな知恵袋」として呪文が継承されるような、日常に根ざした伝統文化でもある。
キリスト教以前・以後の宗教学的背景から魔女の社会的変遷を辿りつつ、文献やフィールドワークに基づき、呪文の言語構造を解明しようとする試みだ。文章はユーモアに溢れて読みやすい。
著者独自の視点による「呪文が効く仕組み」の考察である日本人の感覚を交えた分析は、非常に説得力があり、知的好奇心を大いに刺激された。
巻末の、日本で暮らすルーマニア人への呪文の実践についてのインタビューは呪術が今なお現代社会に息づくリアルな実体であることを改めて印象づけている。