呪文の言語学

154件の記録
- 糸太@itota-tboyt52025年9月29日読み終わった言葉の誕生は遠くの他人を動かせるという点で画期的だった、という話を聞いたことがある。その不可思議な力を活用し続けられるよう体系づけてきたのが、現代に残る「呪文」なのだろう。では普通の言葉と呪文の境目はどこにあるのか。そんな筆者の問いは、簡単に馬鹿にできない、とても魅力的なものに思える。最後に披露された挑戦的な実践も含めて。 巻末インタビューのエリーザさんの語る、「胸」と「頭」の話も印象的。割り切れないものの中にこそ、本当があるような気がする。
- 勝村巌@katsumura2025年9月27日読み終わったルーマニア在住の言語学者によるルーマニアの(主に)魔女が使う呪文についての研究所。 西欧の魔女と言えば魔女狩りですが、魔女狩りで魔女が駆逐されてしまったのは西側がメインで東欧にはまだ魔女が生き生きと生きており、生活の中に根ざしているのだという。 これは東欧のキリスト教がギリシア正教だったため、西側諸国のカトリックとは土着の宗教との関連の仕方が異なっていたからなのだという。そういうことなんかも初耳だったので大変面白く読んだ。 著者が言語学者なので、ルーマニアに残る呪文を文献調査して、その構造解析をするというのが切り口で、呪文の中に意味の通じる平文と、意味不明の暗号のような部分がある、というような解き方をしていて面白い。 つまり、アブラカダブラみたいな言葉の効能、みたいな音節だけの部分はなぜ存在するのか、という点を考えるところは面白かった。 ハリーポッターの「エクスペクト・パトローナム」はラテン語では平文で意味が通じる、とか「痛いの痛いの飛んでけ〜」の主語はなんなのかとか、アブラカダブラには亜種がいろいろあり、国によっては回文になっている地域もあるとか、そういう豆知識的なところも面白かった。 パスタードの呪文を必死で覚えた10代があったわけだが、あれなども平文と暗号文の組み合わせだったと言える。あれは作者の萩原一至が適当にヘビメタとか聴きながら組み合わせで作ったものなんだろうが、雰囲気や説得力は出ていたので、意識はしていなかったが、本物に近い言語的な構造に近づけていたのだろう。 ルーマニアという国と、著者の研究対象であるロマ(古くはジプシーと呼ばれた放浪の民)の関わりなどにも触れられて、そこも面白かった。 魔法というものが、テレビアニメのように派手なものではなく、腹痛が治るとか、日照り続きの土地に雨が降るとか、不倫して駆け落ちした元旦那の相手が不幸になるとか、そういうものが主で偶然起こりうる事象の確率が上がる、というものなのが生活に根ざしている点だと思った。 日本も極東の島国として相当独特の文化を持っていると思うが、ルーマニアなども大変に個性的な国なのだろうな、ということが実感できた。いつか行ってみたい。
- sataka@satakan_4432025年8月24日読み終わった呪文を言語学的に分析し、その最小構成要素を探る3章がやはり面白い。ルーマニアの呪文は、定型詩や祝詞に近いものを感じた(メロディーは無いらしいけれども)。
- ハム@unia2025年8月20日読み終わった呪文、ルーマニア、魔女、魔術、詠唱、護符など厨二病をこじらせている身としてはものすごく楽しい時間を過ごせた。 呪文を分析するうえでの前提知識として説明されるルーマニアの魔女について、文化についてが興味をそそられっぱなし。 日本って魔女好きですよね(偏見か?) ルーマニアの呪文のバリエーションのなんと多いこと。 それらをコーパスとして言語学的なアプローチをしていく試み、最高。 学術書ではないからかなりライトな書き方をしてて、ガチガチな言語学テイストなものもあれば是非読みたいなと思う。 「特殊なテキスト構造が魔力を生産し、ことばに力を持たせて呪文に変える」 ことばが世界を切り取り表現する鍵になって、そこに魔力を感じる仕組みを合わせると。 言語学って実はかなり守備範囲の広い学問でめちゃくちゃおもしろいのに地味な感じで見られがちなのなんでだろう。
- はな@hana-hitsuji052025年8月6日気になる@ TOUTEN BOOKSTORE最近の気になる本の傾向的に、言葉や言語とそれに付随する対話や自分が今の時点で何を理解出来るのかを知りたいということがあるのかもしれない🤔
- 芝生@grass-sbf2025年8月3日読み終わった面白かった!ことばがもともと持つ力(それを発することによって世界に作用する力。魔術的かどうかに関わらない)と、それを工夫して求める作用を努めるよう組み立てたのが(少なくともルーマニアにおける、残っている)呪文と理解した。その実際の効果は置いておいて、ことばの"力"を人が信じてきた証が詰まっている本だと思った。ことばは人も自分も動かす。その結果世界を動かす。そういう根本的な通念を感じると、言語学を学んだ者、利用している者として嬉しくなる。
- 芝生@grass-sbf2025年8月2日読み始めた発売前から気になってた。面白くて1章一気に読んでしまった。言われてみれば私たちは「魔女」といえば西欧のキリスト教文化における断罪対象としてのそれをベースにした存在のことだと思い込んでいる。1章は筆者の体験談も交えながら、ルーマニアにかつて、そして今もなお人々の生活に根差して当然のように存在している魔女と、その受容について語られる。読みやすい。このあとの章も楽しみ。