はるき ⚠︎ネタバレ有⚠︎ "正欲" 2026年1月9日

正欲
正欲
朝井リョウ
冒頭の事件記事を頭の片隅に起きながら、話が展開していく度に息継ぎを禁止された様な気持ちで読み進めた。 正欲。 疑うこともなく、自分を正しい側における人。 迷いながらも、正しさを選択肢に持っている人。 怒り、絶望し、諦めて、正しさを欲していた人。 わたしは、もう迷うことはなくなったけど、正しさを選択肢に持っている人かな。 作中で「正しい」とされている循環から外れることを選んだから、持っていた人、かも。 正しさを欲しながら、明日を手放す寸前でこの世に留まるために手を取れた2人を思うと、事件に発展するきっかけの人物に失望する。 けれど、その人もまた、どうしようも無い欲を抱えていたんだろう。 いや、だとしても、事件に至った人は同情はすれど許容は出来ない。 この本を読んでもその感想なんですか?って言われそうだけど、そりゃそうだよ。 守られるべき尊厳や人権で引かれる一線は存在するから。 その一線があるから「内心の自由」というのも存在するわけで。 他者の尊厳を冒したのなら、それは一線越えです。 社会って多数の為のシステムだから、強者の理論だし、それは理解される側が作った正しさですよねと言われても、そうですねとしか言えないけど。 でも、どこかで線を引かなければいけない。 その線をどこで引くのかは話し合いの余地があるはずなんだけど。 この、話し合いの余地があると思うことも、マジョリティ側の驕りなんだろうなと思う。 わたし自身、性癖云々じゃなくても「どうせ理解されないからなぁ」と思って、愛想笑いですませてしまうことも多々あるし。 視点を変えると、「どうせ分かんないでしょ」というあしらいに対して「話してくれないんだから分かるわけないじゃん」と八重子のように思う自分もいて。 完全なブーメランです、はい。 あらゆる作品に触れる度に、こうして心が揺らいでしまう。 けど、放棄して考えるのをやめるのが一番の逃げだと思うから、やっぱり思考し続けるという結論に至る。 今のところ、わたしの一線は「他者を侵害しない」という事で、そこを守れば内心はどうであってもいいかなと思っている。 この作品がいつか古典となって、「昔の人って当たり前のことをこんなに難しく考えていたんだね」と言われる時代が来るといいね。
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