カミーノアン "人間標本" 2026年1月9日

人間標本
人間標本
湊かなえ
序盤で主人公の幼少期の体験が語られる。物語の核になるモチーフの制作が描かれるが、テンポはかなりゆっくりで、正直ここは我慢が必要かもしれない。ただ、そのじっくりさがあるからこそ、あとから効いてくる違和感がある。 「標本にする」という行為の悍ましさと、アートとしての美しさを同時に想像しながら読むことになるため、読書体験は決して気持ちのいいものではない。丁寧に読めば読むほど、頭がクラクラしてくるような感覚すらある。 中盤から物語は一気に動き、終盤では『リバース』を思わせるように、畳み掛ける形で思考を揺さぶられる。悪意よりも、理解しようとすることや守ろうとする気持ちの歪みがじわじわとした恐怖を感じさせる。 登場人物たちは、誰かのために「自分の運命」を標本として差し出した。そこにあるのは悪意ではなく、取り返しのつかない善意。
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