
K-5
@kokoro4
2026年1月11日
日の名残り ノーベル賞記念版
カズオ・イシグロ,
土屋政雄
読み終わった
借りてきた
よかった
“人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。夕方がいちばんいい。”
長く執事として勤めているスティーブンスが、まとまった休暇をもらい昔の同僚に会いにドライブ旅をして、その道中でこれまでのことを振り返る物語。
タイトルへの収束が美しい。読みやすく景色が見える丁寧な描写、主人公視点だからこそ少しずつわかってくるスティーブンスの人となり。
読み進めるごとに主人公への見方が変わっていくのが面白かった。通常主人公を軸に物語が進むものだが、カズオイシグロは主人公像がブレるのが印象的な作家だと思う。
自他ともに認める完璧な執事スティーブンス、しかしだんだんと、品格ある執事を目指すあまりデリカシーがなかったり、機微に疎かったりと、執事としては優秀ながら人間として完璧ではない部分が多分にあることが分かってくる。しかし彼が真面目でプライドをもって職務にあたっていたこともまた、とてもよくわかる。
だからこそ。
自分の人生をかけた仕事が迎えた斜陽。
自分は正しかったと繰り返すこと、正しかったのかと繰り返すこと。間違いなく精一杯やってきたのに、それは疑いようもないのに、彼自身では気づけない、気づこうとしない、今更遅く、どうにもならないたくさんのこと。
人生を捧げた職務に胸を張って名乗れない鬱屈。
ミス・ケントンとあり得たかもしれない未来。
ダーリントン卿に出来たかもしれない手助け。
日の名残りのように、沈みゆくかがやく日の美しさと寂しさが胸に残る物語。






