
トルソー
@spq88
2026年1月12日
東京タワー
江國香織
読み終わった
初・江國香織。あとがきを読む限り、他の江國作品とは異なるようだがとても良かった。
主体的であるがゆえに翻弄される耕二と、翻弄されることで主体化する透。後者の方が、幸福に描かれるのがおもしろい。
あとは、大きな主題として愛する人の過去というか来歴の問題があって、それは、愛する人のすべてを手に入れることは原理的に不可能であるということをあからさまにしてしまう。しかし人間の欲望のなんと深淵なことか。
好きなところはいくつもあるが、あからさまに巧みなのは、文庫341頁。
おもてにでると、地面が濡れていた。
「雨が降ったんだな」
空気がつめたかった。
「いいじゃん、もう上がってるならべつに」
耕二が言い、透は苦笑した。
最終盤にダメ押しのように書かれるふたりの対比。透はきっと、過去を知りたがるし過去を惜しむけれども、しかし一方で現在が過去の延長であることを知っていてゆえに未来に目を向けられる。反面、耕二にとって雨はいま降っているか降っていないかでしかないのだが、そう思っているからこそ濡れた地面に足を滑らせることもあるのだ。




