07 "熊になったわたし 人類学者、..." 2026年1月13日

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@cocoa007
2026年1月13日
熊になったわたし 人類学者、シベリアで世界の狭間に生きる
熊になったわたし 人類学者、シベリアで世界の狭間に生きる
ナスターシャ・マルタン,
大石侑香,
高野優
熊に襲われて生き残った人間は半分人間、半分熊になる…エヴェン族の言い伝えを図らずも身をもって体験した人類学者の話。 この作者は、熊に襲われる以前から現代の西洋文明に違和感を感じていた節がある。そこに現代西洋文明とは真逆のシベリアの少数民族の思想が流れこんでくる。 熊に襲われる前に作者は繰り返し熊の夢を見ている。また、エヴェン人から「あなたは熊と引き寄せあっている」というようなことを言われる。 事前にこの予言めいた出来事がなければ、熊に襲われる体験は恐怖だけで塗り潰されていただろう。作者はエヴェン族の思想のおかげで、この恐ろしい体験を別の意味付けで捉え直すことができた。 しかしそれは同時に、現代文明からの逸脱を意味する。今の社会では、人間と自然、自己と他者に明確な線引きをすることが正気の証明で、熊と一体化してしまった作者は狂人のカテゴリになってしまうのだ。 彼女の居場所は現代社会にはなく、かと言って熊の住む自然の森に同化することもできない。 彼女は二つの世界の中間に立ち、別世界の存在を我々に教えることを仕事とする決意をした。 そうしてできたのが、この本だ。 狩猟民族の狩人は、獲物を捕らえる前夜に自分が獲物になる夢を見るという。また、矢を放つ瞬間に獲物の目から自分を見る狩人もいるという。殺す者、殺される者の同化が、そこにはある。 現代でこの狩人と類似した心理状態を、理屈による理解ではなく、体感的に再現した人間いたことに驚いた。 現代ではともすれば狂気とされてしまうこの感覚は、人間の中にまだある。科学文明に押しやられて、奥深くで眠っているだけなのだ。そう思わずにいられない内容だった。
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