本屋lighthouse "翻訳のスキャンダル" 2026年1月13日

翻訳のスキャンダル
翻訳のスキャンダル
ローレンス・ヴェヌティ
年始から宣言どおりにメルヴィルの『タイピー』を素人翻訳しはじめていて、なんだかたのしい。ということでずっと気になっていたこちらを読む。 世界の覇権言語である英語の特権性を揺るがすこと、あるいは外国のテキストを自国語に翻訳することによって失われる異質性、といったことが根底にあるテーマのひとつらしい。 「読みやすい翻訳」を我々は高評価するけども、その読みやすさの理由が「異質なものの排除=訳出せずにスルーしたり、日本文化内部のものに変換してしまったこと」にある場合、そこにある種の侵害が生じているとも言える。特に、異質なものの排除がより強い立場からなされた場合、たとえばカリブ海のテキストを英語に翻訳するとか、東南アジアのテキストを日本語に翻訳するとか、その場合はまさに「植民地主義」的な翻訳となりうるということだ。逆に言うと、読みにくい訳文があらわれたとき、そこには我々が真摯に向き合い理解しようと努めるべきなにかがある、と考えればよいということになる。小説に限らず翻訳本が「わからない」ことはよくあるが、それは「自分にインストールされていないことと向き合っている」証であり、落ち込んだり苛立ったりしなくてよいということでもある。なるほど、これは元気になれる本だ。
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