
じゅん
@Insomnia___404
2026年1月16日
100分間で楽しむ名作小説 白痴
坂口安吾
読み終わった
白痴の女と火炎の中を逃れ、「生きるための、明日の希望もないから」女を捨てていく張り合いもなく、ただ今朝も太陽の光が注ぐだろうかと考える。戦後の混乱と頽廃の世相にさまよう人々の心に強く訴えかけた表題作である──。
白痴の意味を知ったのも、戦争による焼夷弾などの威力の怖さに身震いしたのもこの作品。
家人に疎開の経験がある者がいたため幼い頃から耳にしていたが、ここまで臨場感ある表現だと読んでいる間に手に汗を握ってしまい、グラシン紙が湿ってどうしようもなかった。
初めの感想としては"爛れてますねぇ…"という言葉が自然ともれた。
時代が時代ということもあるだろう。今ではどこまで明け透けに言葉にできるだろうか。
所々共感めいた気持ちになったところもあった。
いただく給与で制限されることの多さ、理想と現実の狭間でヤキモキとする部分だ。
私自身仕事上で似たような気持ちになっていたところだったので、ひとつ頷いたところだ。
そして、白痴の女。
書籍に購入する決め手となったのが「死ぬ時は、こうして、二人いっしょだよ。」という一文だったのだが、そこで登場してあまつさえ喜びとも言い難い感情を見出したのか、と。
愛情はないにしろ肌に触れ、人目を気にしながらも連れ立って逃げ出し、その言葉を口にできた時点で相当の覚悟がおありのように感じたのだがどうなのだろうか。
伊沢に近しい人間だったとしたら、脇腹をついと小突いて真意を尋ねたいところだ。
そして、私はこの台詞は好きな方だ。
全体的な内容で得手不得手はあると思うが、命をギリギリ繋いでいる状況で言えるかと問われたら、白痴の女を一時的にでも大人しくさせるための方便だとしても言葉にできない。
むしろ言われてみたいとさえ思った。
100分間で楽しむ名作小説では解説が見受けられなかったため、解説付きのものをもう1冊買おうかと考える夜冬の読書だった。
