
食いしん坊ちぇりぃ
@yummyyummycherry
2026年1月16日
ある行旅死亡人の物語
伊藤亜衣,
武田惇志
読み終わった
モヤモヤが残った
本を置けない面白さだった。間違いなく。
でも、面白い読み物として消費をして良い類のものなのかわからない。最後まで読んでみて、この話にどのような社会性や汎用性があるのだろうかという胸のザワザワ、モヤモヤが残った。これは作りものの物語ではなく実在した人物の話だから。
人と交流を持たずにひっそりと生きていた女性が、たまたま報道関係者の目についたというだけで、こんなに晒されていいのか。無関係の私が彼女の人生の断片を知ってしまって良いのか。死後は個人情報保護法の対象とならないとしても、人の尊厳まで命とともに消失するわけではないのではないかなど、ぐるぐると考えてしまった。
次々と分からないことを明らかにしていく筆者2人がこの本の主人公なのだと割り切ると、「面白かったな」だけで終われる。取材にかかった費用は最終的に記事になった時点で経費として精算できたのかしら、なんていうことすら気になった。でも行旅死亡人の女性が主人公であるとすると、なんだか気持ちがしんどくなる。
**この先 結末について言及あり**
事の顛末として、残された大金が違法に取得されたものであることがわかったり、行旅死亡人の女性やパートナーの過去をさぐる中で道徳的倫理的な問題が明らかになったりするといった展開があれば女性の過去を調べて公にすることにそれなりの意義があった気はする。でも結局行き着いたのは身元判明の域を出ないわけで、昔の知り合いに辿り着いて情緒的に思いを馳せられるようなエピソードが出てきたところで本人の意にそぐわないことが容易に想像できるような話を死後に書き、出版し、我々が読んでしまって良いものなのだろうか。






