"こころ" 2026年1月21日

@s_ota92
2026年1月21日
こころ
こころ
夏目漱石
p15 「寧ろそれとは反対で、不安に揺かされる度に、もっと前へ進みたくなった。」 p16 「傷ましい先生は、自分に近づこうとする人間に、近づく程の価値のないものだから止せという警告を与えたのである。他の懐かしみに応じない先生は、他を軽蔑する前に、まず自分を軽蔑していたものと見える。」 p22 「人間を愛し得る人、愛せずにはいられない人、それでいて自分の懐に入ろうとするものを、手を広げて抱き締める事の出来ない人、───これが先生であった。」 p34 「私は世の中で女というものをたった一人しか知らない。妻以外の女は殆ど女として私に訴えないのです。妻の方でも、私を天下にただ一人しかいない男と思ってくれています。そういう意味から云って、私達は最も幸福に生れた人間の一対であるべき筈です。」 p46 「私は私自身さえ信用していないのです。つまり自分で自分を信用できないから、人も信用できないようになっているのです。自分を呪うより外に仕方がないのです。」 p47 「かつてはその人の膝の前に跪ずいたという記憶が、今度はその人の頭に上に足を載させようとするのです。私は未来の侮辱を受けないために、今の尊敬を斥ぞけたいと思うのです。私は今より一層淋しい未来の私を我慢する代りに、淋しい今の私を我慢したいのです。自由と独立と己れとに充ちた現代に生れた我々は、その犠牲としてみんなこの淋しみを味わわなくてはならないでしょう。」 p55 「そりゃ私から見れば分かっています。(先生はそう思っていないかも知れませんが)。先生は私を離れれば不幸になるだけです。或は生きていられないかも知れませんよ。そういうと、己惚になるようですが、私は今先生を人間として出来るだけ幸福にしているんだと信じていますわ。どんな人があっても私程先生を幸福にできるものはないとまで思いこんでいますわ。それだからこそこうして落ち付いていられるんです。」 p79 「梅が咲くにつけて、寒い風は段々向を南へ更えて行った。」 p92 「君の気分だって、私の返事一つですぐ変わるじゃないか。」 p168 「このまま人間の中に取り残されたミイラの様に存在していこうか、それとも……その時分の私は『それとも』という言葉を心のうちで繰り返すたびにぞっとしました。馳足で絶壁の橋まで来て、急に底の見えない谷を覗き込んだ人のように。」 p170 「私はこんな矛盾な人間なのです。或は私の脳髄よりも、私の過去が私を圧迫する結果こんな矛盾な人間に私を変化させるのかも知れません。」 p171 「だから、一旦約束した以上、それを果たさないのは、大変厭な心持ちです。」 p172 「私は何千万といる日本人のうちで、ただ貴方だけに、私の過去を物語りたいのです。あなたは真面目だから。」 p184 「香をかぎ得るのは、香を焚き出した瞬間に限るが如く、酒を味わうのは、酒を飲み始めた刹那にあるが如く、恋の衝動にもこういう際どい一点が、時間の上に存在しているとしか思われないのです。」 p200 「私は金に対して人類を疑ったけれども、愛に対しては、まだ人類を疑わなかったのです。」 p206 「私の理屈はその人の前に全く用を為さない程動きませんでした。」 p253 「精神的に向上心のないものは馬鹿だと云って、何だか私をさも軽薄もののように遣り込めるのです。」 p256 「私は心の中でひそかに彼に対する凱歌を奏しました。」 p261 「私は思い切ってどろどろの中へ片足踏み込みました。そうして比較的通り易い所を空けて、御嬢さんを渡して遣りました。」 p262 「これは余事ですが、こういう嫉妬は愛の半面じゃないでしょうか。私は結婚してから、この感情がだんだん薄らいで行くのを自覚しました。その代わり愛情の方も決して元のように猛烈ではないのです。」 p264 「つまり私は極めて高尚な愛の理論家だったのです。同時に尤も迂遠な愛の実際家だったのです。」 p283 「『馬鹿だ』とやがてKは答えました。『僕は馬鹿だ』」 p300 「奥さんの云うところを綜合して考えて見ると、Kはこの最後の打撃を、最も落附いた驚をもって迎えたらしいのです。」 p309 「私には綺麗な花を罪もないのに妄りに鞭うつと同じ様な不快がそのうちに籠っていたのです。」 p311 「けれども私の幸福には黒い影が附いていました。」 p314 「純白なものに一雫の印気でも容赦なく振り掛けるのは、私にとって大変な苦痛であったのだと解釈してください。」 p317 「私は寂寞でした。」 p326 「渡辺崋山は邯鄲という画を描くために、死期を一週間繰り延べたという話を先達て聞きました。」
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