やえしたみえ "海と毒薬" 2026年1月19日

海と毒薬
海と毒薬
遠藤周作
俗っぽい感想を言うけど、戸田を見てると『葬送のフリーレン』のマハトが思い浮かぶな。マハトも神父に「悪意や罪悪感という概念がわからないことが、可哀想だ」と憐れまれて、それから人間とは何か?を考えるようになるんだけど(あとは葬送のフリーレンを読んでください)、この作品も、西洋的な神、キリスト教の神のいない、日本という国の国民が、どのように感じ、考え、生きていくのかを書いている。 信仰の無い者はダメだと言いたいわけではない。それは登場人物の多様性を見ればわかる。全員が戸田なわけではないし、私にはどちらかと言えば勝呂のような人間の方が平均的日本人に思える。勝呂は、ごく当たり前の恐怖、苦しみ、弱さ、それによって、目の前で起きる蛮行から目を背けている。ごく普通の人間らしい反応だと思うし、現代を生きる日本人なら大抵勝呂みたいな感じになるんじゃないか。そんな彼に、戦争という大きな海の中で、「それでも日本の青年か」と投げかけられる。日本人とは何か? 『沈黙』もそうだけど、押し流され、ひとかきもできない、あるいはしても大きな波に押しつぶされて意味を成さない、そんな大いなる黒々とした海……進んでゆけずに沈み、流される者たちに遠藤は注目し続けている。遠藤は彼らを賛美も非難もしない。ただ、注目している。ただ、描かれている。彼の作品の中には、ただ、それがあるのだ。現実と同じように。 登場人物は、みんな違う人間だった。みんな違う思惑を、思想を、意見を持っていたのに、生体解剖というひとつの罪に吸い込まれていった。「俺だけは違う」と叫ぼうと、すべて虚しいことがわかるだろう。刑事事件の加害者福祉に関心のある人間として、これ課題図書にするから一旦全員読んでね〜(国語の先生?)という気持ち
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