
和月
@wanotsuki
2026年1月20日
スイマーズ
ジュリー・オオツカ,
小竹由美子
読み終わった
水みたいな文章で、塩素の匂いみたいに独特の個性がある。読んでいる心地はプールの中に揺蕩う感覚に似ていて、新しい読書体験だった。
題材は「認知症と水泳」
ふたつのテーマを織り交ぜた作品とはいえ、前半と後半では舞台ががらりと変わる。話自体の関連性は一見すると全然無いようにすら思えて、読んでいて驚いた。だけど、平穏で秩序が保たれていた存在(プール)に謎のヒビが現れて、段々と不穏な空気になっていく様は、後半の母の変容と周囲の反応に相対するようにも感じられる。
一文の中で読点がかなり多く、流れるような文体が面白い。一人称複数の語りで進む上に、時々太字や括弧書きで各自の科白や意見が挟まる。その場にいる全ての人の思考を覗き見ているような視点が面白い。
考察し始めるとすごく奥が深い筆致で、この作品ひとつで論文が書けそうだなぁと思ってしまう。
認知症を発症してから進行していくまでの描写は、認知症を患った親族が居る身としてはとても苦しかった。特にべラヴィスタの章。
訳者あとがきに記されているジュリー・オオツカの言葉(ユーモアと悲しみはコインの両面だ)の通り、作品全体の雰囲気は重さ苦しみ一辺倒ではなく、軽くユーモアを交えて表現されている。
静謐と軽快と痛切が絶妙なバランスで配置されていて、とても素晴らし作品だった。



