
セージ
@se_ji_hn
2026年1月20日
有罪、とAIは告げた
中山七里
読み終わった
☆
帯に「リーガルミステリ」とあったので楽しみに読んだが、リーガルでもミステリでもない。
あまり揚げ足取りはしたくない。が、お金を取るにしては致命的な部分がいくつかある。
ネタバレを含むので読んでない方は読み飛ばしてほしい。
まずリーガルの部分。
この作品の重要な舞台装置である刑事手続の理解に、根本的な誤りが複数ある。
刑事裁判官は、初めて執務室に訴訟資料が届いたタイミングでは、「起訴状」という書類しか目にしない。他の重要な証拠は、書面にしろ証人にしろ、基本的には公判廷で初めて目にする。
「まっさらな状態で検察と弁護人が攻防を重ね、そこから受けた印象で裁判官が判断する」というのが原則。
この作品では、円が適切な手続を踏まずに調書を読んだり、刑事に意見を聞いたりと、予断を生じすぎている。
筆者の刑事手続の理解が乏しいとスルーしても良いが、円が他の裁判官の予断について疑問と危機感を抱くシーンがあるだけに、筆者はこの点を問題意識として有してはいるらしい。ならばきちんと取材をして欲しかった。
「いや刑事手続の理念に反しているのはお前や」という気持ちになる。
他にも、争点設定の矛盾や論告弁論の順番など、基本的な理解におかしな点がいくつもある。
法廷モノのリアルさで売っている筆者なら、実務家の監修はつけて欲しい。誤解を招く。
それを差し引いたとしても、本筋のメッセージがかなり薄い。
前半では「AIが人間を代替できるか」という投げかけが中心になるのかと思っていたが、哲学的・倫理的な問いは全編を通じて深まらない。
最終的には、ソフトのある問題をあげつらったにとどまり、某国の印象を下げるだけの内容で決着した。
ミステリの部分についても、特にミステリと呼べる内容ではなかった。本当にネタバレなので割愛するが。
