伊藤裕満 "消失" 2026年1月22日

消失
消失
パーシヴァル・エヴェレット,
雨海弘美
ストーリー展開も面白くて読みやすく、そしてなかなか考えさせられるテーマ。 すでに亡くなった父、離れた場所に住む母とその近くに住む姉、という環境が自分に近いこともあって、共感ポイントも多めだった。 アイディンティティとは何か、というような問いがあり、「黒人らしさ(またはそういったステレオタイプ)」を押しつけられることと、市場がそれを求め、消費されていく現状が批判的に書かれているが、同時に介護の問題(時間とお金)が目の前につきつけられる主人公の実存が資本主義にからめとられていく。 そして『自己』が『消失』していくという流れ。 最後の場面は、映画『ブラックスワン』のラストが頭に浮かんだ。または、主人公モンクと分裂する別名スタッグの関係は『ファイトクラブ』にも近いのか。 単純な二項対立という理解で終われない、いくらでも深く潜っていけそうな内容だった。
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