読谷 文 "一人娘" 2026年1月24日

読谷 文
読谷 文
@fumi_yomitani
2026年1月24日
一人娘
一人娘
グアダルーペ・ネッテル,
宇野和美
読者はこの物語を読み終えたとき、「これはファンタジーだ」と思うだろうか。 物語の中で、小児科医ミレレスによってファンタジーではない現実の部分も示唆され、そのことがアリナの支えとなっていたことも事実だ。 アリナが悲観からの妄言を夫に対し口走ったように、協力的な夫のアウレリオが残念ながら少数派であろうことも、また事実だろう。 それでもアリナという一人の人間が、過酷な現実に振り回されて混乱し、疲弊し、葛藤しながらも、生命の生きようとする力を幾度も目の当たりにして心の平安を得るまでの道のりには、説得力があったように思う。 長編と言ってよい長さだったが、章が細かく、場面がパッパッと変わっていく様子は、やはり短編の名手ネッテルらしさを感じた。 (追記) 「メキシコの作家グアダルーペ・ネッテルは、容易に人間を信用しない。これまで邦訳されてきた幻想的な短編集では、冷徹なまなざしで人間を丸裸にし読者に耽溺したくなる不安と恐怖を与えてきた。」 星野智幸さんが本書の書評の冒頭にこう書かれていたように、「そうそう、ネッテル、まだまだやれるだろ?もっとくれよ、ネッテルの不穏ってやつをさあ!」と期待して読みすすめてゆくのだけど、(帯にもあるように)果たしてラストにはその期待は裏切られるのであった。それはもう鮮やかに。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved