"世界99 上" 2026年1月23日

紬
@tsumugu
2026年1月23日
世界99 上
世界99 上
村田沙耶香
「呼応とトレース」というスキルを駆使して「空っぽ」に生きる主人公。その人生のストーリー前半。 ピョコルン、ラロロリン人などのSF要素が話の鍵を握っているが、描かれる内容は、この世界にある生々しい現実そのものだ。 主人公は、状況を俯瞰的に見ることができる能力と、冷静に自分自身に立脚して物事を見極める能力が非常に優れているからこそ、「呼応とトレース」をこれだけ繊細かつ完璧にやってのける。 ただ、それらを包含する自分自身がどの見方・態度を選択するか、という立ち位置を自分の中に持てないこと、軸を持てないことが、主人公の不確かさや空虚さにつながっているのだろう。 「世界99」が、セルフ・真実の自己といった言葉で表されるものだとしたら、いくつもナンバリングされた「世界」は、多面的な自己の表れではないか。そしてそれらは、多かれ少なかれ、そして自覚の有無にかかわらず、すべての人にあるものだと思う。 主人公が鏡のような存在に出会って、「世界99」という名前を手に入れて、この後どんな生き様を見せてくれるのか。下巻が楽しみだ。
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